一生添い遂げます
25年前、東京は港区の家具店で美しい装飾が施されたチェストを購入し、
「オシャレにアーバンライフを楽しむワタシ」と、自己満足に浸っていたのですが、
使っていくうちに引き出しはガタガタするわ、背面の板が外れるわ、木が擦れて木屑が引き出しの中に溜まるわと、次々とアラが見えてくる事態に。
装飾もよくよく見るとハリボテで、アンティーク風を装っていただけと判明。
そう、見る目がなかったのです。
今思い返すと、購入した店も5年以上「閉店セール」ののぼりを立てている怪しげなお店でした。
そんな反省を踏まえ、次に購入したチェストが上の写真のもの。
1920年頃に設立された、イギリスのハーバート・E・ギブス(Herbert E Gibbs)社製です。
戦後、北欧デザインの大ブームで、この会社もチーク材を使う北欧スタイルの家具が作られるようになったのでこのチェストはそれ以前のもの。
背部についていたタグの字体から1920年中頃から1950年中頃の物のようです。
隣りにある椅子とほぼ同世代と思われます。
少なくとも70年は経っていることになりますが、何せ作りが素晴らしい。
引き出しは、引っ張る力に強く前面からはほぞが見えない“包み蟻組継ぎ”という技法で作られ、本体に引き出しをはめ込みやすいように角に丸みを付けたり斜めにカットするなどと、随所にこだわりが見られます。
また、オーク材の杢目が揃っている前板は一本の木から作られているようです。
もちろん開閉もスムーズ。
幅76㎝奥行41㎝とそんなに大きくないのですが、深さがあって収納力も申し分なし。
脚の部分は、壁に付ける棚などを支えるブラケット(台座)に似ているところから「ブラケットフィート」と呼ばれる形でしっかりと本体を支えていて安定感があります。
北欧デザインのようなシュッとしたスマートさはないものの、タンスの基本に忠実な容姿と性能にこだわったしっかりとした作り。そして取っ手と脚の控えめなデザイン。
まるで歳を重ねた品のある英国紳士のようです。
ここまで書いて気付きました。
家具を見る目って人を見る目に当てはまります。
若い頃は本質を知らなくても見た目が良いだけで浮かれ、後に痛い目に合っていました。
歳を重ねるにつれ見る目が培われていくんだな・・・と。
丈夫で控えめで包容力があり、少しだけ洒落っ気のある家具・・・そして人に出会いたいものです。
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